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  • 執筆者の写真Makiko Kaiser

生音+会議システムの共存は難しい

更新日:2021年1月4日

旧・天皇誕生日の今日、祝日ではないのがちょっと不思議な感じがします。

皇室ファンでもなんでもありませんが、天皇といえば、

内親王が結婚したら「皇女」という職位の公務員になってもらう、というアイデアがあるようですよね。


全国の通訳翻訳者のみなさん悩んだと思いますが、私も最初聞いた時、どう訳したら良いのか頭を抱えました。

「内親王」も「皇女」も、どっちも普通に英語に訳したらprincessですが、良いこと思いつきました。

この文脈の特別な公務員「皇女」は、princess emeritus でどうでしょうか。

上皇さまも、emperor emeritusですし!


→と書いているうちに24日クリスマスイブになってしまいました。


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本題です。


オンライン・リモート会議というのがコロナ以降、だいぶ浸透してきましたが

それでもやはり、通訳者は現場に行かないといけない案件、たまにあります。


お客さんのコアメンバーと通訳は現場に集まり、

お客さんのお客さんはリモートでオンライン参加、みたいなパターンです。


そういうのをこの秋何回かやらせていただいて、難しいなと思うのが

「現場の生の音」と「会議システムの中の音」を同時に聞くことです。

音響エンジニアさんが入っていて、しっかり環境を構築してくれていれば問題ありませんが

そういう余裕のあるお仕事ばかりではございませんでした。


会議システム と生音が混在する環境での通訳者にとっての課題は、大きく二つ。

・通訳者が聞く音(元発言)に混ざるノイズ

・現場の音(生音)と、会議システム上の音の間の時差。俗にいうディレイ。



【事例1】

感染対策上、通訳者は別室で通訳する案件。

顧客は別の部屋で会議をしています。

では通訳者はどうやって会議の音(元発言)を聞くかというと、お客さんがパナガイドを使って、自主的に集音します!ということでした。


オンライン会議システムの向こう側にいる、お客さんのお客さんが通訳の訳出を聞き、しかもそのシステム上で随時発言するので、

右耳に会議システム用のイヤホン&マイク、左耳にパナガイドを聞くためのイヤホンを装着して、不安いっぱい開始しました。


ちゃんと音響さんがいればミキサーとか入れて使いやすくしてくれるはずですが、

素人が素人判断でオフィスでやるとこういう立て付けになってしまいます。


結論としては、地獄でしたので、全くオススメしません。



1、お客さんがパナガイド送信機の扱いをわかっていない。

- 送信機のマイクをONにしたまま机にがん!と置いたり、他の人に受け渡したりするために発生するものすごいノイズ。また、ヘッドセット(パナにデフォルトでついている金属製のカチューシャにマイクが口元に伸びるようについているもの)を装着せずに、手で握って話すので、マイクそのものを触ってしまうことによる雑音、また指向性があるマイクなのに、裏側(音を拾わない方向)から話してしまうために、声がきちんと入ってこない。とにかくものすごい雑音なので、通訳者は疲弊します。アコースティックショック満載なので、聴力低下の原因にもなります。心の底からやめていただきたいと思いました。手持ち無沙汰で集音用のマイクを触っちゃう人、コロナ前からいましたがね…

2、会議通訳システムの音声をパナガイド送信機が拾ってしまう。

パナガイドで拾う音(現場の生の音)と、会議システムの中の音声との間には、ディレイが発生します。今回、お客さんが会議システムの音をスピーカーで聞いていたため、PCから出てくる会議システムの音声をパナ送信機が拾ってしまい、同じ音が二重に聞こえてくるという現象が発生しました。当然、自分たちの訳出の声もパナが拾って、通訳者の耳に返ってくるので、ものすごくうるさかったです。


PCにイヤホンをさして聞いてください、会議システムの音をパナが拾わないようにしてくださいと機材チェック時にお願いはしていたのですが、このお客さんは残念ながらお願いを聞いてくれませんでした。機材チェックの時は一瞬しか聞けないので、それでも行けるかなと思ったのですが、本番になったらそううまくはいかず、地獄のようにうるさい音源を聞きながらの業務となりました。失聴しそう。


3、パナガイドの音声と会議システムの音声をアンプでミックスしているわけではなく、通訳者は片耳ずつ別々のイヤホンを装着している状態なので、ちゃんとは聞こえない。


訳出時、時にはパナの音に集中したいために、会議システムの方のイヤホンを外したりするのですが、もう一方の参加者側が随時質問を挟んでくるため、それが聞こえなかったりする。また、手の右利き左利きがあるように、人間、普通利き耳は片方です。利き耳ではない方で聞いた音はすごく訳しにくい。

とまあ大変な案件でした。


通訳を使う会議で、どうしてもパナガイドで集音するなら、音響エンジニアさんに入ってもらってセッティングをきちんとして、音のミックスを適切に行うべきですね。もっと言えば音響さんを入れるならその場しのぎのパナガイドじゃなくて、ちゃんとしたマイクを立てたほうがいいです。


そこまで経費はかけられないから、既存のパナガイドをどうしても使いたい!という場合は、妥協案として、パナガイドに集音用の性能のあるマイクを固定して、スタンドに立てて、マイクには決して手を触れないで使ってもらう方法があるにはあります。


詳しくは、平山敦子さんの書かれた、超有名コラムがありますのでご参照ください。


同じ発想で、自分でパナガイドではない集音装置にそれなりのマイクをつけて

会議卓に置いて耳取りを試みたこともあります。

会議室・会議卓の大きさや、人の配置によってはこれも有効です。

オンラインとは関係ないですが。



【事例2】

また別の案件では、関係者全員が一箇所にいました。

発言者が目の前にいるので通訳者には生の音も聞こえつつ、

同時にライブでインターネット配信もしているので、

インターネット上の音もイヤホンから聞こえてきます。

これも生の音とオンラインの音は時差があるので、聞きにくいです。

そして、通訳者の声もメインのスピーカーと同じマイク(円盤状の、よく会議室で見かけるタイプ)で集音してしまうので、

訳出すると自分の声が自分の耳に返ってきてしまうという地獄。


この時はオンラインの音を聞く必要はないと判断し、イヤホンは捨てて生音を聞いて訳出しました。

会議室が非常に大きかったため

現発言の声が散ってしまって「聞きにくい」部屋ではありましたが

二重・三重にワンワン聞こえてくるよりはよっぽどマシでした。


この時は片方向のみの通訳で済んだからそうできたのですが、

インターネット上の参加者から質問がきたりする場合、この作戦は使えません。

上記の事例1と同じ悪条件になります。


こうした苦しみの案件を経て、

・音響のプロがいない現場で、インターネットを介した音と、現場の生の音(パナ含む)を混ぜて運用してはいけない

ことがわかりました。


お客さん(音響のシロウト)に、パナ送信機やマイクを触らせてはいけませんね。



生音+会議システムを組み合わせて使った案件、他にもありましたが、

音響さんがちゃんと環境を組んでくれた場合は問題ありませんでした。

やっぱりプロはすごいです。

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