• Makiko Kaiser

【消費財業界の通訳 その4】商談から店舗に並ぶまで

最終更新: 2020年3月20日


メーカーの営業さんや卸の営業さんが、小売業者にどういう風に売ればいいか、

なぜそのメーカーの商品を並べるべきなのか、というプレゼンをして、小売業の棚に並べてもらうように合意を取り付けます。


メーカーの営業部門がこの商談の部分を担っている場合のビジネスモデルを

GTM (Go To Market)と言います。

直販とも言うこともあります。消費財に限らず、IT業界等でもたまに聞く言葉です。


どんな会社でもリソースには限界があるので、

優先順位の高いお客さん(この場合小売業者)に

自前のリソースをアサインして関係を深めよう、

ということを大抵の会社は考えます。(これがGTM)


では優先順位がそれほど高くないお客さんはどうするのか、ほっといていいのか?

もちろん放置プレイでいいビジネスはできないので、

外部のパートナーを活用しよう、ということになります。

そのビジネスパートナーが卸売業者だったりするわけです。

(こちらはパートナーモデルpartner model とか、エージェンシーモデル agency model とか言いますね。


中小の小売が多い日本のランドスケープにおいて、

小さいお客さんも合計したらそれなりの規模です。

卸売業にうまく立ち回ってもらうために、卸対応に特化したチームがメーカー側にいたりもします。


さてメーカーの商談の相手はバイヤーである、とこれまでの回で書きました。

バイヤーの勤務先はどこか。「商品本部 Merchandising Department (MD部とも)」です。

商品を開発する部門ではなくて、メーカーが持ってきた商品を選定して何をいくつくらい売るのかを決める部門のことです。

バイヤーとの商談を「本部商談」と言います。英語はCHQ negotiation (CHQはcorporate headquarter)。


本部というのは会社の本社所在地ではなくて、

バイヤーの勤務先である商品本部のことです。

場所は商品本部が本社と同じである場合も、そうでない場合もあると思います。

非常にミニマルなオフィススペースに衝立がたくさん立ってブースが仕切られていて、

待合スペースで営業さんが大勢バイヤーとの交渉の順番を待っている、と言うのがよくある光景。


小売チェーンによっては本部商談の結果が各店舗に通達されて、

トップダウンで合意事項が実施されることもあるようですが、

本部より店舗の方が権限が強いチェーンの場合、

店舗レベルで商談が必要になったり(store negotiation)、

または全国チェーンの場合、各地方レベルで商談が必要だったりもするようです。

なかなか気が抜けないわけです。


営業さんがわざわざ店舗まで出向いたり、MDさんが活躍したりするのはこういう時です。


MD」とか「マーチャンダイザー」と言ったら、

現場の店舗で売り場づくりをする人のことです。

英語はMD でもいいし、merchandiser 、(店舗を回っているので)rounderと言ったりもします。

メーカーサイドに雇われており、

バックヤードにある在庫から商品棚へ商品の補充をしたり、

店長と交渉して発注してもらったり、

商品が目立つようにPOPを貼って目立たせたり、

什器(じゅうき)fixture を設置したりします。

多くは家庭の主婦で、時には自分でPOPを工作して持ってきたり、

昔クリスマスツリーに巻きつけたようなピカピカのモールで飾ったり、

非常にクリエイティブかつバイタリティにあふれた方々でした。

(何度か同行させてもらって、お仕事ぶりを拝見したことがあります。)


営業さんと同じようにMDさんも無限に雇えるわけではないので、優先順位の高い店舗を回っています。

これをMD回訪店と呼び、英語ではMD round store などと言います。


実際の商品はメーカーの工場から出荷され、メーカーの倉庫に格納され

そこから卸の倉庫、小売業の店舗へと送られていきます。


どれくらい多くの店舗へ送られているのかを測るのが「配荷(はいか) distribution」です。

例えば商品Aを計1万店舗に置きたい場合、

「配荷目標は1万店」(distribution target is 10 thousand stores )という言い方をします。

もちろん、配荷店は多い方が我々消費者の目に触れる機会が増えるので、

買ってもらいやすくなりますね。


配荷目標は営業さんに割り振られ、各人頑張って交渉してくるわけです。

またはボトムアップで各人が達成できる数字を出して、

合算して会社としての目標を出しているという面もあるかと思います。


本部商談の結果、めでたく商品Aは小売Xで取り扱ってもらえることになりました。

そうすると商品Aは小売Xの本部に取扱商品として「登録」されます。

この登録をlisting と言います本部登録はCHQ listing です。

本部レベルではなく、店舗レベルで登録してもらうことを店舗登録 store listing と言います。


先ほど述べたように、本部と店舗の力関係はチェーンによって色々らしく

本部で登録しても店舗では登録されていない=取り扱ってもらえないということがあるらしいです。

そのために店舗登録が必要でそのための対策がいるわけですが、

通訳的にはこの「登録 listing 」という言葉は

このような背景を知らないとなかなか訳せないので要注意です。


日英の時は register を使ってもわかってもらえると思いますが、

外国人は listing と言うので、英日の時に「登録」と訳せないと、話が変なことになります。


リスト化とか、言っちゃダメですよ。


今回のtake away 

GTM ゴートゥーマーケット、直販
商品本部、MD部 Merchandising Department
本部商談 CHQ negotiation
店舗商談 store negotiation
MD、マーチャンダイザー MD, merchandiser, rounder 
MD回訪店 MD round store 
什器(じゅうき)fixture
配荷(はいか) distribution
登録 listing 
本部登録 CHQ listing 
店舗登録 store listing 


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新型コロナが始まって1年以上経ちました。 個人的には二度目の妊娠出産がありました。 通訳界隈では、オンラインの利用が普及しました。 1年ちょっとまえは、 同じ部屋で2本のマイクを同時にONにしたらハウリングする、という事実も 通訳者の常識ではありませんでした。今はみんな知ってますよね。 オンライン会議に自宅から入るのもすっかり慣れました。 リモートワーク、私は大好きです! 「通訳を提供する」という

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