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執筆者の写真Makiko Kaiser

「のろま」なのか「迅速でない」のか

更新日:2020年3月17日


仕事に関係ないことばっかり書いていますが

たまには通訳らしい記事を。


※通訳は守秘義務がありますので、

業務のことを書くのは結構難しいんです。


先日、日経新聞を読んでいたら、カルロス・ゴーンが

「日本人はのろま」と語った、という記事がありました。


マルチリンガルなゴーン氏ですが、

本人が日本語で「のろま」と発言したとは思われません。

外国語のみで行われたインタビューを日本語に訳したか、

インタビューの場に通訳がいてその訳出をもとに記事を書いたか

どちらかであろうと思われました。


「のろま」かあ。

結構思い切った訳語選択だな。と思っていました。

だって一国の国民を形容するのには

ニュアンスがネガティブすぎますよね?


原語が何語でどういう単語だったのか。

気になって検索してみたけれど見つけられませんでした。


ブラジルの新聞の報道が下敷きにあるようなので、

ポルトガル語の新聞記事を訳して日経に掲載したのかなと推察しました。


以下妄想-----------


例えば、このインタビューに英語ー日本語の通訳が入っていたとして

ゴーンが Japanese people are slow と、イライラした感じで発言したとします。

ゴーン氏の気分とそれまでの発言の流れから、

通訳がslowをのろまと訳しても必ず不適切であるとは言えないのではないでしょうか。

むしろ発言の根幹を捉えた良い訳だったりするかも知れないです。

わからないけど。


ただそれがジャーナリズムにのっかって

日本語の世界全体に配信されたときにどうなのか。

しかも日経新聞。

通訳はどこまで忖度すればいいのか? 


以上妄想---------------


というのがその記事を読みながら私が考えたことですが

数日後、


「「のろま」は翻訳が適切ではありませんでした。

「迅速でない」とします」(要約)


と訂正が載っていました。


なのでその記事をネットで今見ると「迅速でない」に置き換わっています。


「迅速でない」というのも

個人的にはあんまり自然な日本語表現には思えないのですが

きっと発言内容を最大限に丸く、

読者の反感を買わないようにするとこうなるんでしょうね。

ゴーンさんの気持ちは、訳語がどっちでも同じだと思います。


slow が原発言かどうかはわからないけど、

訳語として今ぱっと考えられるのは


のろま

迅速でない

ゆっくり

ゆったり

ゆるやか

急がない

とろい

鈍い

仕事が遅い

スロー(困ったときのカタカナ頼み。笑)


もっとあるでしょうが、

実際どの単語を訳出に使うのかは、その場の瞬時の判断になります。


(記事の翻訳はいろんな人のチェックが

翻訳者の作業後に入るはずだと思いますが

通訳はその場の一瞬一発が勝負ですよ)


なので判断の材料として

事前に資料やらブリーフィングやらをお願いするのでありまして、

お客様各位におかれましては

お忙しいでしょうが御協力をお願いできると幸いです。


急にビジネスモードになったところで、今日はここまで!

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